名護オジの歴民講座(6): 奈良と沖縄–その2
蝶々(チョウチョウ)の本当の和語(本来の日本語)をご存知であろうか。「蝶々はチョウ、あるいは古い言葉で云えばテフテフであって、それ以外の日本語があるか」、と大部分のひとは疑うであろう。しかし、チョウは、「てふてふ」も含めて中国語、あるいは朝鮮語由来の外来語なのである。
私の子供のころ(沖縄では)、チョウは「ハベル」あるいは「ハーベールー」と云っていた。実はこれが古来の標準日本語でチョウを意味する言葉であった。この言葉は、沖縄と九州の一部、および長野県以北、東北地方などにしか残っていない。奈良を中心とする列島の中央部では滅びた言葉である。何故、奈良では滅びたであろうか。以下は私の説。
沖縄ではハベルは、高級神女(ノロ)の象徴であったことは、沖縄の神歌から明らかである。おそらく女性たちが宗教権をもっていた時代のヤマトでもハベルは、卑弥呼やその後継者の女性司祭者の象徴であったことが想定される。しかし、彼女達は、4~5世紀頃に男性的、軍事的権力者たちによって、さらに奈良時代以降は仏教者たちによって滅ぼされ、すみに追いやられ、零落した。彼女たちの象徴である「ハベル」も禁句となったであろう。万葉集にはテフテフを含めても、蝶を謡った歌は皆無である。沖縄の神歌、オモロと対称をなす。
この例のように、古い日本の言葉や文化が奈良・京都を中心とするヤマト中央部では滅び、反対に沖縄や東北地方などの辺境に残っている現象を「文化周圏論」とも云う。
これに類する言葉が、神拝みの真っ先に唱えられる「ウー、トートー」である。柳田国男によれば、
村の人々が社頭にぬかづく際、最初に自然に口から出る一言葉は、実に今日でもまだ次の通りである。
アアトウト、 壹岐島 (長崎県)
アアトウトマウシアゲマスル 同上 (長崎県)
アアトウトウサマ 肥前北松浦郡大島 (佐賀県)
アットウダイ 陸前氣仙郡 (宮城県)
アットダイ 陸中釜石 (岩手県)
アトダイ 陸中遠野郷 (岩手県)
アットデア 盛岡市 (岩手県)
アットダイ
